2010年第七回研究会の報告−政策科学とSTS−日本における「科学技術イノベーション政策のための科学」論議を巡って

 第七回研究会は、田原さんに政策科学の現状について発表いただきましたが、単に政策科学の歴史だけでなく、それをSTSの文脈と関連付けながらその功罪を語るという意欲的なもので、規定時間内には収まらないような、多くの論点を含んだご発表でした。政策を科学するという考え方にある、科学的に整除された政策の形成という、いわば一種の夢がだんだんと後退していく様子が手に取るように分かると同時に、いわば複雑系的な理解が進む中で、先祖返りのように、線形の計画理論が復活しかねない現状は、不可解なものであるという印象を受けました。
 さらに結局のところ、異なる価値を調整するメタ理論は結局のところ形成することが出来ず、それは政策科学からは引き出せないという指摘は、政策現場での最大の問題についての単純な解はない、とはっきり示唆されたようで大変興味深いものでした。また日本の現状についても「分析なき参加論」という批判が現状の問題点をえぐっていると感じられました。参加と言えば問題解決、とでも言いかねない最近の風潮に対しては、最近多くの分野から批判の声を聞きますが、こうした表面的な風潮に対して一石を投じる発表でありました。