2013年第17回研究会(現代人類学研究会との共催)  科学・探索・人類学 

サイエンススタディーズ研究会第17回は、特別編として、現代人類学研究会との共催という形で以下の研究会を行います。科学技術社会論科学史の研究を人類学という分脈から読み替えるという議論です。ご関心のある方はどうぞ。


2013年10月5日(土) 14時開始
【場所】東京大学駒場キャンパス 14号館407教室

 科学・探索・人類学 


1.2. 研究会要旨
 狩猟、採集、漁労、航海などの探索活動は、人類学の重要な分析対象として研究がなされてきた。その一方で、現代社会において重大な役割を果たしている科学も人類学の考察対象となってきている。本発表では、人類学で伝統的に検討されてきた「探索」をキーワードとし、科学的実践を分析する。
 探索活動は、所謂伝統的社会のみならず、科学的実践の現場でも行われている。科学捜査 (鈴木)、ナノサイエンスの研究現場(山口)において、どのように探索行為がなされているのかを明らかにする事で、人類学でこれまで扱われてきた探索活動と、科学的実践におけるそれとを比較し、人類学と科学的実践との結合を試みる。

 鈴木 舞 (東京大学大学院総合文化研究科)
3.1.2. 発表題目
 科学捜査と探索活動:科学的実践と人類学の接合に向けて
3.1.3. 発表要旨
 犯罪捜査とは、様々な証拠資料を利用しながら犯人を探し出す探索活動と言える。科学の発展の中で、証拠資料を科学的に鑑定し、その結果を利用する科学捜査が行われているが、本研究では、ニュージーランドでのフィールドワークに基づき、この科学捜査がどのように行われるのかに着目する。科学捜査の特徴は、扱う資料の多さから、それを鑑定する為の数多くの鑑定分野が含まれる事、また、科学捜査の内容が、裁判という文脈での意思決定において利用されると言う点である。こうした、科学鑑定分野間の相互作用、裁判との関係性の中で、いかにして科学捜査が行われるのかを明らかにする。そして、科学捜査を探索行動とした場合に、これまでの人類学的な探索研究とどのような類似点や相違点があるのかを分析する。

 山口 まり (東京大学大学院総合文化研究科)
3.2.2. 発表題目
 科学研究における探索活動:ナノサイエンスの研究現場から
3.2.3. 発表要旨
 最先端科学研究の現場では何が行われているのか。ナノサイエンスとよばれる研究分野では、新しい現象や物質の探索が進められている。研究者らは、理論の構築、実験により、これらの探索を進め、科学的知識を生み出しているが、研究者同士のような社会的交流も重要な活動の一つである。これら様々な実践に基づいて、最先端科学において知識はどのように生まれていくのだろうか。特に、実験活動を取り上げる。実験における暗黙知が指摘されて久しいが、実験に必要な知識はもちろん暗黙知だけではない。研究室の伝統や研究者間の交流を通じて伝えられる知識があるだろう。研究者自身の試行錯誤の結果として得られる知識もある。これらは実際どのようにして得られるのだろうか。いくつかの研究室の例を取り上げて、教科書には掲載されない、一般化できない知識をどのように研究者らが構築していくのかを考察してみたい。