2014年 Luc Boltanski 教授講演会関係(予告)

本研究会の幹部である、山口富子先生(ICU)が来る7月18日にリスク論をめぐるワークショップをICUで行いますが、それに先立ち、国際社会学大会にあわせて来日予定のLuc Boltanski 教授をその前日の17日にICUにお招きして、基調講演をお願いする予定です。
Boltanski 教授は現在フランス社会科学高等研究院(EHESS)の所長であり、もともとP.Bourdieuの共同研究者でしたが、その後『正当化の論理』『資本主義の新たな精神』等の共著を通じて、現代フランスのもっとも影響力のある社会学者の一人です。

予定では17日は、福島がディスカッサントをつとめる予定で、詳細はまたお知らせします。

2014年第19回研究会報告 SSU STAP細胞問題討論会

サイエンススタディーズ研究会第19回は、SSUの主要メンバ数名を中心に、現在紛糾しているいわゆるSTAP細胞にかかわる一連の騒動について、その社会、制度的背景を、(発表者の希望により)、クローズドの形式で討論を行いました。その内容は、背景となる理研の組織的な構造変化、理研における広報の歴史的変化、さらに現在の科学政策における不正防止問題の推移といった論点です。

議論は予定時間を越えて、活発な内容になりましたが、その中で特筆すべきは、この問題の始まりからのメディアの報道のあり方、不正と過失のあいまいな境界、メディアに登場するSTS学者やいわゆるガバナンス学者といったコメンテータの功罪、さらにはこうしたメディアを騒がす事件が起こった際の政策上の反応や、規制強化という解法への疑問と、多岐にわたり、通常の議論とは異なる、より反省的な議論が展開できたと感じられました。

2014年第18回研究会報告 Hans=Jorg Rheinberger教授講演会

サイエンススタディーズ研究会第18回は、5月26日に、文化人類学教室、科学史教室と共催で、もとマックスプランク研究所科学史部門所長のHans-Jorg Rheinberger教授をお招きし、Writing the history of science with experimental systemsのタイトルで、講演および討論会を行いました。

Rheinberger教授は、Synthesizing protein in test tubeその他の著作で有名な生物史研究者であり、特に詳細な実験過程の歴史的研究と、デリダ等のフランス思想を融合させた独自のアプローチを展開されている研究者です。今回の講演では、特に上記の著作で示されている、experimental systemsという概念の詳細をお話になり、討論の時間はその概念の持つ効用と限界、20世紀を席巻した、in vivo, in vitroという体系に代わる、あらたなin silicoのシステムにおいて、同様の概念が使えるのか否か、法科学や、生態学等にもこうした概念の拡張は可能か、現在のポストゲノム体制の意味について活発な議論が交わされました。

またバシュラールに関心が強いRheinberger教授は、今後公開された彼の遺稿集におけるアート面の研究もなさりたいとのことで、その精力的な活躍ぶりに関係者は大いに関心をもって会は終了しました。(その後の懇談会では、ハイデガーやドイツの科学史とかの話題で盛り上がりました)。

2013年第17回研究会(現代人類学研究会との共催)  科学・探索・人類学 

サイエンススタディーズ研究会第17回は、特別編として、現代人類学研究会との共催という形で以下の研究会を行います。科学技術社会論科学史の研究を人類学という分脈から読み替えるという議論です。ご関心のある方はどうぞ。


2013年10月5日(土) 14時開始
【場所】東京大学駒場キャンパス 14号館407教室

 科学・探索・人類学 


1.2. 研究会要旨
 狩猟、採集、漁労、航海などの探索活動は、人類学の重要な分析対象として研究がなされてきた。その一方で、現代社会において重大な役割を果たしている科学も人類学の考察対象となってきている。本発表では、人類学で伝統的に検討されてきた「探索」をキーワードとし、科学的実践を分析する。
 探索活動は、所謂伝統的社会のみならず、科学的実践の現場でも行われている。科学捜査 (鈴木)、ナノサイエンスの研究現場(山口)において、どのように探索行為がなされているのかを明らかにする事で、人類学でこれまで扱われてきた探索活動と、科学的実践におけるそれとを比較し、人類学と科学的実践との結合を試みる。

 鈴木 舞 (東京大学大学院総合文化研究科)
3.1.2. 発表題目
 科学捜査と探索活動:科学的実践と人類学の接合に向けて
3.1.3. 発表要旨
 犯罪捜査とは、様々な証拠資料を利用しながら犯人を探し出す探索活動と言える。科学の発展の中で、証拠資料を科学的に鑑定し、その結果を利用する科学捜査が行われているが、本研究では、ニュージーランドでのフィールドワークに基づき、この科学捜査がどのように行われるのかに着目する。科学捜査の特徴は、扱う資料の多さから、それを鑑定する為の数多くの鑑定分野が含まれる事、また、科学捜査の内容が、裁判という文脈での意思決定において利用されると言う点である。こうした、科学鑑定分野間の相互作用、裁判との関係性の中で、いかにして科学捜査が行われるのかを明らかにする。そして、科学捜査を探索行動とした場合に、これまでの人類学的な探索研究とどのような類似点や相違点があるのかを分析する。

 山口 まり (東京大学大学院総合文化研究科)
3.2.2. 発表題目
 科学研究における探索活動:ナノサイエンスの研究現場から
3.2.3. 発表要旨
 最先端科学研究の現場では何が行われているのか。ナノサイエンスとよばれる研究分野では、新しい現象や物質の探索が進められている。研究者らは、理論の構築、実験により、これらの探索を進め、科学的知識を生み出しているが、研究者同士のような社会的交流も重要な活動の一つである。これら様々な実践に基づいて、最先端科学において知識はどのように生まれていくのだろうか。特に、実験活動を取り上げる。実験における暗黙知が指摘されて久しいが、実験に必要な知識はもちろん暗黙知だけではない。研究室の伝統や研究者間の交流を通じて伝えられる知識があるだろう。研究者自身の試行錯誤の結果として得られる知識もある。これらは実際どのようにして得られるのだろうか。いくつかの研究室の例を取り上げて、教科書には掲載されない、一般化できない知識をどのように研究者らが構築していくのかを考察してみたい。

2013年第16回研究会のお知らせ

サイエンススタディーズ研究会第16回は、柳瀬昇さん(日本大学法学部准教授)三上直之さん(北海道大学高等教育推進機構准教授)のご両人にご講演いただきます。

2012 年の夏、エネルギー・環境政策に関する「国民的議論」の一環として、パブリックコメントや意見聴取会という従来から試みられていた手法に加え、参加型手法の一つである「討論型世論調査(Deliberative Polling: DP)」が実施されました。日本の国家政策の検討に際して、参加型手法が採用されたのはこのDPが初めてであるとされています。
本研究会では、「討論型世論調査徹底批判」と題し、この試みに実行委員として参加された柳瀬さん、第三者検証委員会の専門調査員を務めた三上さんをお招きして、それぞれ憲法学及び科学技術コミュニケーションの見地から講演を行っていただくとともに、参加者を交えた討論を実施します。


なお、参加希望者には、事前に以下の論文をお読みになることを勧めします。

柳瀬昇(2013), ”公共政策の形成への民主的討議の場の実装―エネルギー・環境の選択肢に関する討論型世論調査の実施の概況―,” 駒澤大学法学部研究紀要71, pp.192[53]-59[186].

※以下からダウンロード可能です。

http://wwwelib.komazawa-u.ac.jp/cgi-bin/retrieve/sr_bookview.cgi/U_CHARSET.utf-8/XC01210017/Body/jhg071-03-yanase.html


プログラム:

1.講演「討論型世論調査徹底批判−憲法学の見地から」

講演者:柳瀬昇さん(日本大学法学部准教授)

憲法学の見地から、そもそも政策形成に「民意」を「反映」することは妥当なのかという根源的な問いについて、1)討論型世論調査の意義と限界、2)コンセンサス会議やプラーヌンクスツェレとの特徴の比較、3)公共的討議の場の参加者の代表性、利害関係者の参加、ポラライゼーション、反事実性などの観点から考える。

2.講演「討論型世論調査徹底批判−科学技術コミュニケーションの見地から」

講演者:三上直之さん(北海道大学高等教育推進機構准教授)

DPを、科学技術をめぐる市民と専門家との対話の場と捉え、そこで何が問われ、それに専門家はどう応答したのかについて、当日実際に行われた議論に関する質的分析の結果をもとに考える。また、昨年12月にベルリンで開かれた科学技術コミュニケーションに関する日独シンポジウムにおける会場からのレスポンスを含め、国際的な反応についても紹介する。

3.全体討論

日時:2013年9月23日(月)17:15〜19:15 東大駒場キャンパス14号館4階407号室(開始時間にご注意ください)

2013年第15回研究会のお知らせ

サイエンススタディーズ研究会第15回は、東京大学地震研究所の纐纈一起先生に「地震の科学者が裁かれるということ」といいうタイトルでお話をしていただきます。

昨秋,第一審の判決が出たイタリアのラクイラ地震裁判を例に,科学者が起訴され裁判を受けるということについて議論します。纐纈先生は、資料の収集だけでなく,科学者と告訴団に対して長時間のインタビューを大木聖子氏とともに行っていますが、それらに基づいてラクイラ地震の際の事実関係と問題点を明らかにします。また,日本での例にも触れながら,地震学など自然災害に関わる科学が抱える構造的な問題についても検討します。

日時 2013年6月7日 金曜日 東大駒場キャンパス14号館(部屋は17階706です)。16時半より。

2013年第14回研究会のお知らせ

サイエンススタディーズ研究会第14回は、城戸隆さん(RIKEN GENESIS)に「パーソナルゲノムとCitizen Science ―Data Driven Wellness とQuantified Self のムーブメント―」というタイトルでお話をしていただきます。

現在、パーソナルゲノム時代が到来しつつあると考える人が多くいます。この流れは我々の社会や価値観にどのような影響をもたらしていくのでしょうか。オーダーメイド医療や、最近のQuantified Self (QS) の流れを紹介しながら、現在取り組もうとしているCitizen Science のプロジェクトについて議論します。

日時 2013年3月20日水曜日 東大駒場キャンパス14号館4階407号室。14時開始ですのでお間違えなく。