2010年第五回研究会の報告〜科学的判断と社会的判断−GMO論争の分析を通じて

 第五回研究会の山口さんの発表は、ご自身のつくばの研究所での経験を出発点に、GMOが社会問題化するプロセスを、社会全体の問題として扱いたい、という関心をどう実証的に扱うかという問題提起から始まりました。社会学的な理論背景として、社会問題の社会構築主義、さらに論争研究のいくつかのアプローチを中心に、新聞を中心としたデータベースを使いながら、GMOをキーワードにして、その推移を観察するという意欲的なものです。
 活発な議論が展開されましたが、特にそうした記事の分類に際して、ボルタンスキ/テネボーの正当化の論理についての枠組みを使うことの妥当性や、新聞記事というデータベースが持つ特殊な性格を位置づけるかについて、あるいは論争とはそもそも何を示すのかといった問題にうついて、活発な議論がなされました。個別の事例から、社会全体にわたる問題の推移を観察するという山口さんの議論は、その方法論的な枠組みも含めて、今後の展開が期待される刺激的なものでした。