2011年第十回研究会の報告−多職種グループでの継続的なミーティング活動を対象としたフィールド会話分析の試み

 第十回研究会の高梨さんのご発表は、科学未来館を含む複数のフィールドを中心として、様々なミーティングにおける複雑なコミュニケーションの諸相を、長期にわたるビデオ録画を中心として、古典的な会話分析と、組織論的観点を結びつけようとする、野心的なものでした。こうした研究は、多くの場合、ある場面を一部取り上げてそれを細かに取り上げるというのが中心的な手法ですが、高梨さんはそうしたミクロ分析の視点を生かしつつ、それを長期にわたるプロジェクト全体の動きと絡めながら、ミクロ−マクロをつなぐ視点を探求するという点でチャレンジングなものでした。
 論点は、こうした長期的データの中からどうやって適切なミクロデータを取り出すか、という方法論的な質問から始まり、ミーティング場面に限定することの功罪、複雑な職種間のインターフェイスの諸相、あるいは会話場面における権力関係、議事録の役割と政治性、まだ存在しない実態を議論するための道具や絵の役割、さらにこうした分析がどういう文脈で現場に還元されるのか、といった多くの刺激的な議論がなされました。
 工学的な認知研究と、より人文的なコミュニケーション研究を自在に行き来する高梨さんの研究スタイルに、来るべき新たなコミュニケーション研究の可能性を垣間見た気がします。

 次回の研究会は、今回都合により参加できなかった田村大さん(博報堂上級研究員/東大情報学環iSCHOOL)に発表をお願いする予定です。